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Diary

〈読んだ本〉悪童日記 (アゴタ クリストフ著/ハヤカワepi文庫)

確実に何かを消耗する本です。
読後には体重が500グラムほど落ちてしまったに違いない。
凄惨な場面が次から次へとやってくるので
清く美しくお育ちあそばした方は、
ご飯が喉をとおらなくなるかもしれません。

「悪道日記 アゴタ・クリストフ著 ハヤカワepi文庫)」は
戦禍を避けて〈おばあちゃん〉の家に預けられる
双子の少年〈ぼくら〉が、日々のくらしを作文形式に綴った小説です。
〈大きな町〉〈彼の国〉〈解放者たち〉〈外国の兵隊〉
こんなふうに特定の場所や登場人物の名も年齢も出てこず
時代背景も明確に記されていませんが、文中にそえられた訳註などで
舞台が第二次世界大戦中に劣勢となったハンガリーであると推測できます。
作者自身がハンガリー出身、戦後ソ連軍の支配下にあった祖国を亡命した経歴を
もつので、実録ではないかと思えるほど物語にリアリティがあります。
戦争は命を消耗するし、心も消耗する。

暴力、差別、奪略などに侵されないよう感情の一切を捨て
したたかに生きてゆく双子の聡明さが、とんちで問題を解決する一休咄と重なって
痛快に感じます。双子の〈ぼくら〉が生きる手段は狂気に満ちていて
「痛快だ」なんて言うと多くのひとに非難されそうですが、
ここがこの本にみつけた唯一のあかりです。

この本には2冊の続編もあるようです。

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