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Diary

〈読んだ本〉若者はみな悲しい(S.フィッツジェラルド著/光文社古典新訳文庫)

アメリカの小説家フィッツジェラルドさんの
代表作「グレート・ギャツビー」があまりに有名で、
その影にかくれていやしないか
とても心配になっている短編集「若者はみな悲しい」は、
若者とむかし若者だった人たちの悲しみが繊細な心理描写とともに
描かれた9つの物語です。
信仰心の呪縛に苦しむ男の子と、神父の交流を描いた『赦免』。
返ってくるあてのない金を友人に貸し、電車では見さかい無く座席をゆずるなど
親切に時間とエネルギーを注いできた〈善人のプロ〉のような男が、
とあるきっかけで親切心を捨てる決心をする『温血と冷血』。
そしてこの本の代表作ともいえる、ひとりの美少女の持つ魅力に
ふりまされる男の哀れな姿を書いた『冬の夢』。
やがてその少女が輝きを失い、〈「女の人は、あっさり色褪せるものです。」〉などと
噂をされているのを知った男は、取り戻せない自分の青春時代をはじめて哀れみます。
男も悲しいけど、若さと美しさを消費し〈色褪せて〉しまった女もまた悲しい。
そんな物語です。
〈今の自分が遠くまで来てしまって、もう逆戻りすることは
ないからだ。〉とあるように、人は若いと呼ばれるその時期を通り過ぎ、
かつての夢の時代には二度とは戻ることができなくなって初めて
「若さというものは時に悲しい」と気づくことになるのかもしれません。

ところで、先に引用した〈「女の人は、あっさり色褪せるものです。」〉という
箇所を読みながら少々腹を立てた私ですが、
このごろは「色褪せ」も、うまく「色直し」をすると女は
持ち直すということに気がつきました。
その方法についてはまたいつか。

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