HIBINO NAOKO illustration

Diary

〈読んだ本〉カステラ(パク ミンギュ著・図書出版クレイン)

戦争を発端とした民族的な主題でもなく、
不幸と不運とすれちがいを集めた韓流物語からは知り得なかった
軽快でリアルな隣国が1968年生まれの韓国人作家パク・ミンギュの
短編小説集『カステラ』の中にありました。

リサイクルショップで購入した冷蔵庫に「大切な物」と
「世の中に害悪を及ぼすやっかいなもの」をじゃんじゃん放りこんでいく
大学生を書いた表題作の『カステラ』。冷蔵庫の中に、事業が立ち行かなくなり
借金を抱えた父親を入れ、大学を入れ、国会議員や大統領を入れ、
アメリカも入れて(アメリカを入れて近所のマクドナルドがなくなった!)、
そうして冷蔵庫のドアを閉め、主人公は気持ちの整理をしてゆきます。

 古くて何もかもが壊れかけている遊園地で、独りスワンボートを
管理している就職浪人中の青年を描いた『あーんしてみて、ペリカンさん』。

 母親が倒れ父親が失踪し、家計を支えるためにアルバイトをかけもちする
大学生が勤務先にあらわれたキリンに声をかける『そうですか?キリンです』

 インターン社員が男色家の人事担当者の権力に恐れて太ももを触らせる
『ありがとう、さすがタヌキだね』

これらを含む全11編。へんてこ奇抜でユーモアのあるタイトルの中に、
社会の仕組みにうまくはまらなかった若者たちが生きづらさを感じながら
「それでもこの世で生きていかねばならないのだ」と前をむく姿がえがかれています。
人類がみんな「家族」だなんていっているスターを見ているだけでは
知る事ができなかった今の韓国、その社会が抱える問題は私たちの暮らす
日本とちっとも変わらないかもしれません。

img891.jpg